JPドメイン名紛争処理方針に基づく申立書
本申立書の本ブログおよび各種媒体への公開の可否について、日本知的財産仲裁センターを通じて申立人代理人に問い合わせたところ、「公開を制限することは出来ない」と回答をいただきましたので、いずれ公開される裁定文に現れない個人情報のみを削除し、フォーマットを整えて公開いたします。
不都合ありましたらお知らせください>関係各位
調べてないけど、本物の『JPドメイン名紛争処理方針に基づく申立書』って本邦初公開じゃないでしょうか。
何かの参考になれば幸いです。
JPドメイン名紛争処理方針に基づく申立書日本知的財産仲裁センター
センター長殿
紛争に係わるJPドメイン名
FIREFOX.JP
申立人
氏名(名称):モジラ・ファウンデーション
登録者
氏名(名称):インフォトランス有限会社
2. 紛争処理手続の申立人の代理人
氏名(名称):弁護士 東澤 紀子 シティユーワ法律事務所
氏名(名称):弁護士 久保 啓一朗 シティユーワ法律事務所
3. 申立人が知っている登録者へのすべての連絡先(前記以外のもの)
株式会社日本レジストリーサービスへ登録したメールアドレス以外の登録者のメールアドレスが「j@firefox.jp」であること
4. 申立の理由
申立人は、JPドメイン名紛争処理方針および同手続規則に従って、この申立が審理され裁定が下されることを要請する。この申立は次の理由に基づくものである。
(1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
1. 登録者が紛争に係わるJPドメイン名(FIREFOX.JP)(以下「本件ドメイン名」という)を登録していること
登録者は、2004年2月18日、本件ドメイン名を株式会社日本レジストリーサービスに登録した(甲1)。
2. Firefoxは、申立人が正当な利益を有する商標であること
申立人は、1994年に全世界で始めて普及したウェブブラウザであるNetscape Navigatorの開発者らを擁するAmerica Online Inc.(現AOL LLC)の Netscape部門の支援を受けて、米国において、2003年7月に設立された非営利団体であり、日本においても、2004年7月28日に公式アフィリエイトである有限責任中間法人Mozilla Japanを設立している(甲2)。申立人は、上記開発者らが1998年より行っていた「mozilla.org」の名称のもとウェブブラウザ等をフリーソフトウェアとして無償で提供するプロジェクトを引継いだものである(甲3~7)。
申立人がmozilla製品として提供するウェブブラウザは、「Firefox」という名称であり(甲8)、2004年2月9日に技術プレビュー版を公開し(甲9の1~2)、2004年11月に正式版を公開した(甲10)。正式版については、公開直後に810万件のダウンロード件数を突破するなど、驚異的な反響があり(甲10)、インターネット・エクスプローラーに次ぐウェブブラウザとしてのシェアを占めている(甲11の1~4)。
申立人は、日本の他、2004年2月17日にはヨーロッパ(甲12の1)、2005年3月4日には中国(甲12の2)に公式アフィリエイトを設立し、世界各地において50以上の言語に翻訳したウェブブラウザ「Firefox」を積極的に提供している(甲13)。申立人は、Mozilla Japanを通じ、インターネット上でホームページ(http://www.mozilla-japan.org/)を作成し、ウェブブラウザ「Firefox」の紹介を行っており(甲14)、「Firefox」というと、申立人のウェブブラウザ製品であると広く認知されている。
3. 申立人の商標と同一であること
申立人は、次の登録商標を有している(甲15)。
記
商 標 FIREFOX
登録番号 4929354
登 録 日 2006年2月17日
出 願 日 2005年1月28日
指定商品 第9、41、42類
本件ドメイン名「FIREFOX.JP」のうち、「JP」は国別コードにより日本を意味する部分に過ぎず、多くのドメイン名に共通する要素であるから、登録者のドメイン名において主たる識別力を有するのは「FIREFOX」の部分であるといえる。
申立人の有する商標は「FIREFOX」であり、これと本件ドメイン名とは、ファイヤーフォックスという称呼を共通するものであり、要部において一致している。
(2)登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
登録者は、法人としての登記がなく(甲16)、申立人が登録者に郵便物を送っても宛所不明で返送されてきた(甲17)など、実態のない会社である。
登録者は、ドメイン名登録時に株式会社日本レジストリーサービスに対して電話番号を登録しておらず(甲1)、ウェブ上のアイタウンページ、Yahoo!Japanの電話帳においても電話番号登録がなされていない(甲18の1~2)。また、登録者は、「FIREFOX」について商標登録出願を行っていない。
登録者は、ドメイン名登録後、ウェブページを作成しているものの、何のウェブページであるのか全く分からない、実質的には機能していないと推測されるようなウェブページであった(甲19)。しかも、同ウェブページは、申立人が登録者に対して本件ドメイン名譲渡について話し合いを持ちかけていた平成19年7月までは同じであったが、同年8月には、変更されていた(甲20)。変更されたウェブページは、更に何のウェブページであるのか分からず、「top」、「party」、「production」のメニューだけ機能しているものの(甲21~22)、DJであるスギウラムの紹介のウェブページになっており、「FIREFOX」とは一切の関係が認められない。トップページの著作権表示部分の「flyer.to」をクリックすると、「株式会社フライヤーティーオー」としてのウェブページに移動するが(甲23)、FIREFOXという表示はどこにもなく、Firefoxとは全く無関係である。
従って、登録者は本件ドメイン名に関する権利も正当な利益も有していないと思料する。
(3)登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
登録者は、(2)で述べたとおり、本件ドメイン名を登録後ウェブ上で実質的には使用しておらず、現実に本件ドメイン名を利用した事業も行っていない。かかるドメイン名の不使用の場合であっても、登録者の事情、状況等を判断して不正の目的を認めた先例がある(甲24~25。JP2001-0002事件、JP2006-0008事件)。
本件では、登録者は、Mozilla Foundationがウェブブラウザとしての「Firefox 0.8」の技術プレビュー版を2004年2月9日にリリースした直後である同年2月18日に、本件ドメイン名の登録を行ったものである(甲1)。Mozilla Foundationは、ウェブブラウザの名称を「Firebird」にしていたが、別のオープンソースプロジェクトと名称が重なることから、2004年2月9日、「Firefox 0.8」のリリースと名称変更したことを大々的に発表した(甲9の1~2)。
登録者は、ドメイン名の登録以後、ドメイン名を実質的に使用した事実がないにもかかわらず、2007年3月1日に更新を行った(甲1)。
Mozilla Foundationは、2004年2月9日の「Firefox 0.8」リリース後も、ウェブブラウザ「Firefox」の名称で何度も改良を重ねたソフトウェアを無償で提供しており、ウェブブラウザ「Firefox」は日本におけるウェブブラウザのシェアは第2位、全世界的にも15.42パーセントを占めている(甲11の1~4、26~27。2007年4月現在)。インターネットの大手検索サイトにおいて「Firefox」で調べると、「Google」においては2億4800万件(甲28)、「Yahoo!JAPAN」においては2億3100万件のヒット数があり(甲29)、申立人のウェブブラウザ「Firefox」の案内がトップに出る。最早、「Firefox」という名称は、申立人が提供するウェブブラウザのことを意味することが広く認知されており、登録者がドメイン名を登録し保有し続ける理由は存しないと思料する。
なお、申立人は、本申立前である2007年6月に、申立代理人を通じて登録者に対し、ドメイン名の移転を依頼する電子メールを送り(甲30)、登録者から話し合いをしたいとの返信を受領した(甲31)。然るに、申立人代理人が登録者に対し、具体的な話し合いの日時を提示する電子メールを送っているものの(甲32)、登録者から何らの返信がない状態である。登録者が、一度はドメイン名の移転について話し合いをする連絡をしてきたことからすると、登録者が本件ドメイン名を保有し続けなければならない理由はなく、具体的な条件により、移転について応じる意図があったことが認められる。
申立人は、ドメイン名の登録に関する請求もしくは救済、紛争または紛争処理について、登録者のみを相手とするものであり、故意による不法行為を除き、(a)紛争処理機関およびパネリスト、(b)JPRS 並びにその役員、従業員その他のすべての関係者、(c)JPNIC並びにその役員、職員、委員その他のすべての関係者に対する一切の請求または救済を放棄することに同意する。
申立人は、この申立書に記載されている情報は、申立人が知りうる限りにおいて、完全且つ正確なものであり、この申立が嫌がらせなどの不当な目的のためになされていないことを保証する。
5. 求める救済処置
申立人は、この紛争処理手続において選任されたパネルが、紛争の対象であるドメイン名の登録について、移転の裁定を下すことを求める。
6. ドメイン名紛争処理パネル
申立人は、この紛争処理手続が、一名構成のパネルによって審理・裁定されることを選択する。
7. 他の法的手続
特になし
8. 支払
本センターの補則の一部をなす手数料規則に従い、金189,000円を支払います。
振込日(または振込み予定日): 2007年10月16日
振込銀行名:三井住友銀行
振込銀行本支店名:丸の内支店
振込人名義:シティユーワ法律事務所
9. 申立人による合意裁判管轄地の指定と応訴の同意
申立人は、ドメイン名の取消または移転の裁定に対して登録者が不服のときに提訴できる合意裁判管轄地を、東京地方裁判所と特定し、ここに提訴されたときには応訴することに同意する。
以上
申立人代理人の氏名:弁護士 東澤 紀子 弁護士 久保 啓一朗
提出日:2007年10月16日